正しい食事の情報を見極めるのが
肥満解消のカギ!
贅肉・脂肪をなんとかしようと思った時、運動ではなく食事コントロールに挑戦する人は多いはず。お菓子をがまんする。炭水化物を減らす。野菜を食べる。いわゆる太る食べ物を制限し、痩せる食べ物を摂取する方法がメジャーでしょう。「痩せる食べ物」と調べてみると、野菜や果物、赤身の多い牛肉などを紹介しているサイトがたくさん見つかり、ダイエットの参考になります。
しかし、目を通していくと、あるサイトでは「赤身の肉なら大丈夫」と言っており、別のサイトでは「赤身でも肉は良くない」と紹介されています。情報があふれかえっているせいで、調べれば調べるほど、どれが正しい情報なのかわからなくなってしまう状況です。すると起こりうるのが、自分が正しいと思って信じたダイエット情報が、もしかすると逆効果かもしれないということ。そうならないためにも、情報の取捨選択はとても大切なのです。
正しい情報を取捨選択する1番の方法は、科学的根拠に基づいて自分自身で判断することです。研究によって効果が証明されていると確認できれば、安心して食事に取り入れられるでしょう。ただ、自分で研究結果を紐解くのは大変な手間ですし、論文は理解が難しいもの。現実的には、科学的根拠のある情報をサイトや書籍から探すことになるでしょう。
では、この「科学的根拠」とは一体どういったものなのか。このページでは、科学的根拠のある情報と、注意すべき情報の見分け方について紹介しています。具体的な贅肉・脂肪を落とすための方法は提示していません。けれど、情報の見極めは今後のダイエット・健康への取り組みで必ずぶち当たる壁。ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
科学的根拠とは何かという問題については、書籍「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事(東洋経済新報社)津川 友介(著)」を紹介させていただきます。書籍ではここに書かれているより、はるかに豊富な内容、情報量で説明されていますので、興味を持たれたら書籍もチェックしてみてください。
書籍で書かれている内容は極端な部分もあります。これから将来にわたってでてくる、新しいエビデンス、根拠により論拠がひっくり返される可能性もあるでしょう。(個人的には“「白い炭水化物」は体に身体に悪い”という項目は、わかると言えばわかりますが、とても違和感があります。お米が大好きなので個人的な感情が入っていますが、「論旨的には適量が一番」という点で自分も納得した感じです。)ただ、「現時点における著者が調べた限りによると…」という注釈をつけたうえで、この本からはたくさんの学びを得ることができます。何よりも「食事改善」をしたいと人にとっては、かなり有益な情報を得られるでしょう。
では、さっそく紹介していきます。
書籍「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事(東洋経済新報社)津川 友介(著)」の紹介
タイトル:世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事
著書:津川 友介
概要
ハーバード大学を経てUCLA助教授として活動する医師が、あなたに教える不動のルール。健康になるための「体に良い食品」はこれだけ!あらゆる食品をエビデンスベースで5グループに分類。
- ●バターコーヒーは×
- ●グルテンフリーは×
- ●100%果汁でもジュースは×
- ●βカロテンは×
- ●白米は×
今あなたが信じている健康情報は本当に正しい情報でしょうか。お医者さんや栄養士さんが言っていたから正しいと思っていないでしょうか。専門の資格を持っていると正しいことを発信しているように見えますが、そうとは限りません。
せっかく健康意識の高い人が、テレビや本の誤った情報を信じてしまうことで、その努力が無駄になったり、不健康になってしまうのはとても残念なことです。実は、巷に溢れる「体に良い食事」には、個人の経験談だったり、健康に良いという研究結果がごく少数のものも含まれています。
本書では、最新の膨大な研究論文をもとに複数の質の高い研究で体に良いことが科学的に証明されている食事を紹介しています。まずは2週間ほど本書で説明している食事法を続けてみてください。自分の体が変わってきたことを実感できるようになるはずです。
目次
はじめに
謝辞
本書の読み方
第1章 日本人が勘違いしがちな健康常識
1 科学的根拠にもとづく本当に体に良い食事
2 食品に含まれる「成分」に惑わされるな
第2章 体に良いという科学的根拠がある食べ物
1 オリーブオイルやナッツは脳卒中やがんのリスクを下げる
2 果物は糖尿病を予防するが、フルーツジュースは糖尿病のリスクを上げる
3 魚は心筋梗塞や乳がんのリスクを下げる
第3章 体に悪いという科学的根拠がある食べ物
1 「白い炭水化物」は体に悪い
2 牛肉、豚肉、ソーセージやハムは健康に悪い
特別編 病気の人、子ども、妊婦にとっての「究極の食事」
特に勉強になった、面白かったポイント
医師や栄養士が正しいとは限らない?!
書籍の目次前にある「本書の読み方」に、食事に関する情報が置かれている状況について詳しく書かれています。食事によって健康を維持・向上するには、簡単そうでありながら実は高い知識が求められていることを感じさせられました。食事コントロールで健康を実現するのと同様に、「贅肉・脂肪を落とすこと」「ダイエットすること」は、今や情報戦なのです。
「専門家が言っている情報なら問題ないのでは?」という声もありますが、専門の資格を持っていても正しい情報とは限りません。
まず健康の専門家といえば医師です。医師は病気に関する知識や治療法、対処法はもちろん勉強していますが、食事に関する勉強はそこまで習いません。これは日本だけでなくアメリカやイギリスでも同様に問題視されているそうです。そのため、医師や病院によって話す情報がバラバラなことはよくあります。
「医師と違って食事の栄養について学んできた栄養士なら大丈夫」と思われますが、栄養士も科学的根拠についての勉強はしません。ルール化された食事バランスについて指導する能力はありますが、新しい情報の精査や提供に関してはプロとは言えないでしょう。
では、「厚生労働省が発信する情報なら正しいだろう」と思います。しかし、こちらも正しいとは言いづらいものです。厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食事バランスガイド」には、経済的な理由で微妙な基準を設けていると言われています。
例をあげると、ガイドラインには1日のごはんの量はお茶碗で3~5杯としていますが、科学的根拠のある研究では、2~3杯で糖尿病のリスクがあがっているとか。「ご飯の量を少なくした方が健康に良い」といったことを書いてしまうと、農家に大打撃を与える可能性があります。そういった経済的な理由で、正しい健康情報は隠されたり、歪んだ形で伝わってしまったりするのです。
情報が混沌としている理由には、経済的・マーケティング的な理由以外にもあります。
一方的な面からしか見ていない研究だったり、個人の体験から浸透してしまったりなどです。そうやって科学的根拠の弱い情報が散らばっているのです。科学的根拠が弱いにもかかわらず浸透している健康情報の例が書籍で紹介されていました。
「炭水化物は健康に悪くて太りやすい」
これだとすべての炭水化物が悪く見えますが、実際は、白米やうどんのように精製された悪い炭水化物と、玄米や蕎麦などの良い炭水化物に分けられます。
「βカロテンやリコピンは健康に良い」
βカロテンは野菜に含まれている成分で、体に良いとされていますが、それは野菜そのものを摂取した時の話。野菜からβカロテンの成分だけを抽出してサプリメントにすると、逆にがんのリスクが上がると複数の研究で明らかとなっています。
「果汁100%のフルーツジュースは健康に良い」
果物の摂取量が多い人ほど糖尿病のリスクが低いという研究結果から、果汁100%のジュースも果物を食べていると同じ効果があると考えてしまいがちです。しかし、複数の調査結果からフルーツジュースを飲んでいる人ほど、糖尿病のリスクが高まるという結果が出ています。
果物の摂取量が多い人ほど糖尿病のリスクが低いという研究結果から、果汁100%のジュースも果物を食べていると同じ効果があると考えてしまいがちです。しかし、複数の調査結果からフルーツジュースを飲んでいる人ほど、糖尿病のリスクが高まるという結果が出ています。
そういった情報を自分で精査できるようになり、現時点で「正しい」と科学的根拠が出ている食事を説明するのが、この書籍のテーマとなっています。
科学的根拠にもとづく体に良い食事
この本における、本当に体に良い食品5つ、良くない食品3つ
書籍で紹介されている、科学的根拠にもとづいて健康に良いと言える食べ物は以下の5つです。
- ●魚
- ●野菜と果物(フルーツジュースとジャガイモは含まない)
- ●茶色い炭水化物(玄米や蕎麦など精製されていないもの)
- ●オリーブオイル
- ●ナッツ類
これらは多くの研究によって本当に健康に良いと証明されているため、1つ2つの研究結果では現状の結果が覆されることは考えにくいもの。健康かもしれないとウワサされている他の食品と違って、根拠の厚さが段違いの食品です。
反対に健康に良くないと言える食べ物は以下の3つです。
- ●赤い肉(鶏肉は含まない。ハム・ソーセージなどの加工肉は特にNG)
- ●白い炭水化物(白米やうどんなど精製されているもの)
- ●飽和脂肪酸(バターやココナッツパウダーなど)
こちらも同じく多くの研究結果をもとに出されています。特に白い炭水化物は砂糖とほとんど変わらないとも言われており、糖尿病や生活習慣病のリスクとなる可能性もあります。
健康に良くない食品は、良い食品と置き換える
書籍で紹介されている食事の改善方法で最善なのは、健康に良くない食品を良い食品と置き換える方法です。
白米は玄米に、パスタやうどんは蕎麦に。
牛肉や豚肉は魚や野菜に。
バターはオリーブオイルに。
お菓子はナッツに。
徐々に普段の食事を置き換えていきましょう。体に良くないからと食事量を減らしてしまうと、単純にお腹が減ります。ダイエットでがまんしすぎるとリバウンドするように、食べ続けないという選択はいつか破たんするもの。数多くの行動科学の研究でも、がまんする食事改善は良くないと結果が出ています。
急激に変える必要はありません。健康に良い食べ物が食事の10割を占めていたら、まずは1割を置き換えてみる。その割合を少しずつ増やしていくのが良いようです。
健康への善し悪しについての5の分類
書籍では、食べ物を健康に良いか悪いかで5つのグループに分けています。
グループ | 説明 | 食品の例 |
---|---|---|
グループ1 | 健康に良いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品 | ①魚、②野菜と果物、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類 |
グループ2 | ひょっとしたら健康に良いかもしれない食品。少数の研究で健康に良い可能性が示唆されている | ダークチョコレート、コーヒー、納豆、ヨーグルト、豆乳、お茶 |
グループ3 | 健康へのメリットもデメリットも報告されていない食品 | その他の多くの食品 |
グループ4 | ひょっとしたら健康に悪いかもしれない食品。少数の研究で健康に悪い可能性が示唆されている | マヨネーズ、マーガリン |
グループ5 | 健康に悪いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品 | ①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない)と加工肉(ハムやソーセージなど)、②白い炭水化物(じゃがいもを含む)、③バターなどの飽和脂肪酸 |
※ここでは「健康」は病気になるリスクや死亡率のことを意味している。「茶色い炭水化物」とは精製されていない炭水化物、「白い炭水化物」とは精製された炭水化物のことを指す。
グループ1が健康に良いと証明されており、2、3…となるにつれて、健康に悪影響を及ぼす食品に分類されます。
表に書かれている食品の例を見てみると、ダークチョコレートや納豆など、テレビや雑誌などで紹介されている「健康に良い」「ダイエットに最適」と言われている食品のほとんどが、グループ2に当てはまっています。
というのも、健康に良いという研究結果が1つ出たら、「最新の研究でこの食品は良いと分かった!」と、大々的に紹介されるため。まだ多くの人が知らない情報なので、メディアで取り上げると「へ~!知らなかった」と反応が良いため、大々的に紹介されるとも言えるでしょう。そのため、本当は科学的根拠の弱い食品でも、健康に良いと浸透してしまうのです。
本当に食事で健康的になりたいなら、すでに長年の研究で健康に良いと分かっている食品を摂取するのが最適でしょう。
エビデンスンにはレベルがある
エビデンスとは科学的根拠のこと。著者のような医師や専門家は科学的根拠と言わず、エビデンスと言うようです。書籍では、エビデンスには信頼度のレベルがあると書かれています。「ある食品について研究するとこんな結果が出ました!」といっても、研究の方法によっては信頼性が全く異なるということです。
医学研究は大きく分けると、ランダム化比較試験と観察研究の2種類に分類できます。
ランダム化比較試験 | 研究対象者をくじ引きのようなランダムな方法で、2グループに分けます。片方だけに健康に良いと思われる食品を、もう片方には通常通りの生活を過ごしてもらい、経過を見るという試験。 |
観察研究 | ある集団の食事に関するデータを集めて、特定の食品を多く摂取しているグループと、あまり摂取していないグループに分けて観察を続けるという試験。 |
より信頼性が高いのが「ランダム化比較試験」。研究対象者をランダムで切り分ける分、2つのグループの条件が均等になり、より食品の結果が顕著にわかります。
観察研究は、食品を摂取しているか摂取していないかでグループを切り分けるので、それ以外の条件が加味されません。例えば、「プロテインを飲む人は健康的だ」と観察研究でわかったとします。ただ、プロテインを飲む人の多くは体を鍛えるために運動を頻繁にしているので、健康なのはプロテインを飲んでいるからではなく、運動のおかげかもしれません。
だいぶ飛躍した例ではあるが、そういった可能性を排除しきれないので、観察研究よりランダム化比較試験によるエビデンスのほうが信頼性が高いと言われています。
最強のエビデンスはメタアナリシス
メタアナリシスとは、複数の研究結果を取りまとめた研究のこと。ある研究で「この食品は健康に良い」と分かっても、時代や地域の環境、国ごとの食文化や人種によって結果が異なる可能性があります。これは、ランダム化比較試験でも観察研究であっても同じく起こるものです。そのため、あらゆる状況で行われた複数の研究結果を一つに取りまとめたのがメタアナリシスなのです。
メタアナリシスの中でも最強なのが、複数の研究結果それぞれがランダム化比較試験で行われているもの。まぎれもなく、真実に近いエビデンスだと言えるでしょう。まとめるとエビデンスのレベルは以下の表にまとめられます。
強いエビデンス | メタアナリシス(複数のランダム化比較試験を統合したもの) |
↑ | ランダム化比較試験 |
↓ | 観察研究 |
弱いエビデンス | 個人の経験談、専門家のエビデンスにもとづかない意見 |
書籍で紹介されている健康に良い食べ物は、メタアナリシスやランダム化比較試験で効果が証明されたものに当たっているのです。
贅肉・脂肪を落とすため食事とは少し離れた話になりましたが、いかがでしたでしょうか?ダイエットも健康もたくさんの情報があふれかえっている分野です。間違ったダイエット方法を選択しないためにも、今回の話を思い出して、自分で情報を判断していきましょう。
このページは、書籍「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事 (東洋経済新報社) 著者:津川友介(初版発行2018/4)」を参考にして作成しています。
この本では「医師や栄養士が正しいとは限らない」という衝撃的な内容ではじまり、科学的根拠とは何かを明確に定義したうえで、その根拠にもとづいて体に良いもの、悪いものについての議論が展開されます。ご興味を持たれましたら、是非、本書の方をチェックしてくみてください。