贅肉の正体、脂肪について知って正しい贅肉対策に役立てよう!

脂肪とは何か?

私たちが日夜戦っている贅肉の正体、脂肪について説明します。

参考書籍の紹介

このページは、書籍「一度太るとなぜ痩せにくい? 食欲と肥満の科学 (光文社新書)  著者:新谷隆史(初版発行2018/7)」を参考にして作成しています。
この本では、より詳細な根拠やそれを裏付けるデータをもとに「太る」メカニズムとそれを、阻止するアプローチ方法が、非常にわかりやすく説明されています。ご興味を持たれましたら、是非、本書の方をチェックしてくみてください。

お腹の脂肪は、脂肪細胞

白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞

体内には「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」という2種類の脂肪細胞があり、それぞれ異なる働きを担っています。以下では、各脂肪細胞の役割についてまとめています。

【白色脂肪細胞とは】
人間を含む多くの生物は、脂肪をエネルギー源として活動しています。白色脂肪細胞は食事で摂取した余分なカロリーを中性脂肪として貯蔵し、必要に応じて体内に供給する役割を持っています。
また、白色脂肪細胞は、脂肪から女性ホルモンであるエストロゲンを変換するという大切な役割も持っています。女性が痩せすぎると生理不順などの問題を引き起こすのは、白色脂肪細胞の脂肪が枯渇し、女性ホルモンが十分に分泌されないからです。

前述の通り、白色脂肪細胞は生きていく上で必要な細胞ですが、肥満によって白色脂肪細胞が増え過ぎると、善玉物質の分泌・生成が減り、代わりに悪玉物質が増えてしまいます。
白色脂肪細胞は全身に広く分布していますが、とくに下腹部・背中・お尻・太もも・腕の上部や内臓に多く存在します。贅肉が付き始めると(白色脂肪細胞が増えると)、下腹部やお尻、太ももが気になるのは、この為です。

【褐色脂肪細胞とは】
白色脂肪細胞は脂肪を貯め込む役割を持っていますが、褐色脂肪細胞は体内に貯蔵された脂肪を燃焼させる役割を持った細胞です。人間の場合、赤ちゃんの頃に褐色脂肪細胞がもっとも多く存在しており、主に心臓や腎臓の周り・首の周り・肩甲骨の周り・脇の下の5か所に集中しています。

なぜ赤ちゃんに褐色脂肪細胞が多いのか疑問に思うかもしれませんが、これには理由があります。産まれる前の赤ちゃんは温かい胎内で保護されていますが、産後は胎内より温度の低い外気にさらされます。この際、心臓など大事な臓器を守る為、褐色脂肪細胞が脂肪を燃焼させることで体温維持を行うからです。
褐色脂肪細胞は、加齢と共に減っていきますが、とくに40歳代で大きく減少します。中年太りは、この褐色脂肪細胞の低下が原因の一つではないかと言われています。

参照元:ヘルシスト 平成24年9月10日発行 掲載「肥満に関係するだけじゃない!? 脂肪細胞の正体(PDF)」(京都大学大学院農学研究科教授 河田 照雄)

脂肪は脂肪細胞が集まったもの

私たちのお腹や腰、お尻や太ももについている脂肪は、脂肪細胞が集まってできています。内臓につく脂肪も同じく脂肪細胞がいくつも集まったものです。脂肪細胞は、直径が70~140μm(マイクロメートル)の球形をしており、1mmの中に15~7個程度の脂肪細胞を並べることができる大きさ。細胞としては大型です。脂肪細胞は、脂肪の貯蓄専門の細胞で、成人では数百億個もの脂肪細胞を持っていると言われています。

中性脂肪(トリグリセリド)とは?

脂肪細胞の中の脂肪は、中性脂肪と呼ばれています。料理で使うサラダ油も、化学的には同じ中性脂肪です。中性脂肪を分解すると、グリセリンと脂肪酸に分けることができます。1つのグリセリンに3つの脂肪酸がくっついてできており、トリグリセリドとも呼ばれています。

脂肪酸の構造

脂肪酸は、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)の3種類の原子がつながってできていて、水素と結合した炭素が鎖のようにつながった端に酢酸がついた構造になっています。炭素が長くつながった部分は水と混ざらない脂肪の特徴を持ち、酢酸がついた一方の端は酸性のため、この2つの性質を持つことから脂肪+酸、つまり脂肪酸と呼ばれているのです。

脂肪酸にはいろいろな種類がある

グリセリンはすべての中性脂肪に含まれていますが、脂肪酸には、炭素の数やつながり方の違いで、いろいろな種類があり、それぞれ性質に違いがあります。脂肪酸の種類は、大きく分けると「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類。これは炭素のつながり方に二重結合があるかないかで決まり、二重結合がないものを飽和脂肪酸、1つ以上あるものを不飽和脂肪酸と呼んでいます。二重結合とは、原子が結合するための手の本数に関係し、4本の手で他の原子と結合する炭素原子が、お互いに2本の手でつながっている状態のことです。

二重結合の数で不飽和脂肪酸をさらに分類

不飽和脂肪酸には、二重結合が1つの一価不飽和脂肪酸と2つ以上ある多価不飽和脂肪酸があります。一価不飽和脂肪酸は、オリーブオイルや動物性脂肪に含まれるオレイン酸、多価不飽和脂肪酸には、食用油に多いリノール酸、アマニ油などに含まれるリノレン酸、青魚に含まれるEPAやDHAなどがあります。また、多価不飽和脂肪酸は何番目の炭素に二重結合があるかで分類されており、例えば3番目に二重結合があるリノレン酸やEPAはオメガ3脂肪酸と呼ばれています。

病気が起こりにくいのは不飽和脂肪酸

バターやラードなど飽和脂肪酸の多い中性脂肪は常温で固まりやすく、植物油や魚油など不飽和脂肪酸、中でも多価不飽和脂肪酸が多い中性脂肪は常温では液体となります。このため、EPAやDHAなどオメガ3脂肪酸などの不飽和脂肪酸を摂取するほうが、動脈硬化や脂肪肝などの病気が起こりにくいと言われています。

お腹の脂肪はエネルギーの塊

なぜ脂肪は貯蓄されるのか

体が脂肪をため込まない仕組みになっていれば、肥満の心配がないのに、と思うこともあるかもしれませんが、脂肪を貯めておくのには理由があります。それは、体の中のエネルギーがなくなったときに、細胞にエネルギー源を届けるため。寝ている間や食事が摂れないときに、脂肪細胞にため込まれた中性脂肪を利用し、エネルギー不足になるのを防いでくれるのです。

脂肪がため込まれ利用される仕組み

食事で摂ったたんぱく質や糖質脂質は、腸で吸収された後、アミノ酸・ブドウ糖・中性脂肪として血液の流れに乗り、体の各細胞に届けられエネルギー源になります。エネルギーとして使われなかった部分は、脂肪細胞に中性脂肪として蓄えられます。

時間が経ち、血液中のエネルギーが足りなくなると、脂肪細胞は蓄積された中性脂肪の利用してエネルギー源を供給します。中性脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解し血液中に放出されると、肝臓や筋肉などの体の各器官がこれを受け取り、エネルギーを作り出すのです。

脂肪はエネルギーの塊

脂肪細胞は、いざというときエネルギーを使えるよう貯蓄しておく、いわばエネルギーの貯金箱のような存在です。1kgの脂肪から作ることができるエネルギーは約7000kcal。このエネルギー量は、成人男性の3日分の摂取カロリーにあたり、かなり大きなエネルギーを生み出すことができます。つまり、脂肪はエネルギーの塊と言えるでしょう。

生き残るために必要な脂肪細胞

私たちは、たいていの場合毎日食事を摂ることができ、エネルギー不足になることは稀ですが、野生動物の場合はどうでしょうか。毎日必ず食べることができる保証はないので、飢餓に備える必要があります。このため、食物を中性脂肪として蓄えておき、食物がないときに効率よくエネルギーとして利用できるように、脂肪をため込む仕組みができたと考えられています。多くの動物は食べ物がない冬の間は冬眠しますが、冬眠する前にたくさんの食物を摂り、この仕組みを上手に利用して厳しい食糧不足に対応しているのです。

脂肪をため込む能力を活かすのは強い食欲

蓄えた脂肪で飢餓の季節を乗り切るとなると、どれだけたくさんの食べ物を一度に食べられるかが重要になってきます。そのためには強い食欲を持つことが必要で、それが生存につながるということです。人間の場合は、毎日高カロリーで美味しいものを食べられる環境にあります。強い食欲と脂肪をため込む体の仕組みによって、肥満が問題になってきていると言えるでしょう。

脂肪が過剰に蓄積されることが肥満

摂取エネルギーと消費エネルギー

私たちは、食事で摂った栄養素からエネルギーを得ています。これを「摂取エネルギー」と呼んでいます。また、呼吸や心臓を動かすこと、体温の維持などの生きるため活動や運動などに使われるエネルギーを「消費エネルギー」と呼んでいます。摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスがとれていれば、太ったり痩せたりせず健康な状態を保つことができます。

肥満とはどういう状態?

肥満とは、体内に脂肪組織が過剰に蓄積した状態のこと。食べ過ぎによって、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余ったエネルギーは中性脂肪として脂肪細胞にため込まれます。これが繰り返されると、さらに中性脂肪が蓄積され、脂肪細胞がどんどん大きくなっていきます。この状態が肥満と呼ばれています。現代では生活が便利になり、体を動かす機会が減ってきているうえ、高カロリーの食べ物が世の中にあふれています。その結果、摂取エネルギー過剰になってきたと考えられています。

肥満の度合いを測るボディマス係数(BMI)

ただ、脂肪をたくさんため込んでいる、といっても曖昧で分かりにくいため、肥満の度合いを数値化し、世界的に共通する基準を決めることが求められるようになりました。そこで、登場したのが「ボディマス係数(BMI)」です。BMIは、19世紀にベルギーの数学者アドルフ・ケトレー氏が考案した計算法。正確で誰にでも計算でき、しかもお金のかからない計算法として、世界中で利用されています。

BMIの計算方法

BMI値は、身長と体重がわかれば簡単に計算できます。また、体脂肪率とも互いに関わり合うことがわかっているようです。計算方法は、体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))。身長160cm体重55kgの人の場合、55÷(1.6×1.6)≒21.5となり、BMIは21.5となります。

日本では、BMIが22を標準体重、BMIが25以上を肥満としており、世界保健機関(WHO)はBMI30以上を肥満としています。これは、東アジア人が軽い肥満でも糖尿病などの肥満による疾患にかかりやすいことから、世界の基準よりも少し低めに定義されています。標準体重は、肥満による疾患にかかりにくいBMI値が22であることから決定されました。

BMIは一般の人の肥満指標

筋肉量が多いスポーツ選手やボディービルダーは、筋肉で体重が重くなっているので、脂肪が少なくてもBMIは高くなってしまいます。
BMIは、特別に筋肉を鍛えていない一般の人向けの指標であると言えます。