まず、どんな運動をしたらいい?
贅肉や脂肪が気になりだしたころに健康診断を受けると、体の中では見た目よりも大きな変化が起きていることがあります。あと一歩で健康状態の基準値を超えるほど、ギリギリのラインに達していることも。そんな状況になって、初めて健康を意識する方もいるでしょう。しかし、焦って運動をすると無理をしてけがをしてしまう可能性が考えられるため、注意が必要です。
ここでは太らないための運動のコツや、体を動かすことが苦手な方でも続けられる運動方法などを紹介しています。
このページは、書籍「医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本(日経BP社) 著者:中野ジェームズ修一(初版発行2018/10)」を参考にして作成しています。
この本では、医者に「運動しなさい」と言われても一歩踏み出せない人に向けて、身体を傷めずに安全に運動を始める方法、より効果的な方法について、イラスト図解付きでわかりやすく説明しています。ご興味を持たれましたら、是非、本書の方をチェックしてくみてください。
内臓脂肪を燃焼。メタボ予備軍の人、必見!
メタボリックシンドロームって何?
内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)とは、食べ過ぎや偏食、運動不足などが原因で内臓脂肪が溜まった状態のことを指して言います。内臓脂肪が溜まると、脂質異常(中性脂肪やコレステロールの値が異常になる)や高血圧、高血糖などを引き起こし、脳卒中や心臓病などの重病にかかりやすくなるのです。
内臓脂肪はなぜ溜まる
病気の原因になりうる内臓脂肪には、余ったエネルギーを一時的に蓄積するという性質があります。そのため食事によって得られたエネルギーより消費エネルギーの方が少ないと、内臓脂肪がどんどん蓄積されることに。
運動不足の人は運動している人に比べて消費エネルギーが少ないため、内臓脂肪が多いのです。
厚生労働省が発表した2016年の「国民健康・栄養調査」によると、日常生活で運動する習慣がある人の割合は男性が23.9%、女性が19%。日本人の約5人に1人しか運動していないことになります。
男女ともに最も運動量が少ないのは30代です。30代は20代に比べて代謝も低下するため、食事によってどんどん内臓脂肪を溜めやすくなってしまいます。
メタボ解消には筋トレが一番
メタボを改善するためにはジョギングやランニングなどの有酸素運動に加え、筋力トレーニングによって基礎代謝をアップさせるのが効果的です。
運動不足によって筋肉量が低下すると、基礎代謝が落ちて内臓脂肪が蓄積してしまう原因に。これを防ぐには、筋肉が集中する下半身を鍛えるのがおすすめです。
筋トレを行うことで脂肪の分解を促す成長ホルモンや、アドレナリンなどが分泌されます。筋トレで痩せやすい状態にした後に有酸素運動を取り入れることで、脂肪の燃焼効果がアップ。さらなるダイエット効果が期待できます。
中性脂肪をコントロール。脂質異常予備軍の人、必見!
動脈硬化を引き起こす「脂質異常症」とは
中性脂肪や悪玉コレステロールの増加だけでなく、HDL(善玉)コレステロールの減少によっても動脈硬化になりやすいことが分かりました。この状態を「脂質異常症」と呼び、糖尿病や心筋梗塞などの病気を引き起こす原因となります。
痩せていても中性脂肪は溜まる
脂質異常症は肥満者だけでなく、痩せている人もなる可能性があるため注意しましょう。
たとえ見た目がスリムでも、筋肉の中に脂肪が蓄積される「脂肪筋」ができている可能性があります。生活習慣病にかからないようにするには、運動不足を解消し、付き過ぎた脂肪を減らすことが一番の近道です。有酸素運動や筋トレなどで脂肪を減らし、食べた量だけエネルギーを消費するようにしましょう。
血糖値を抑えるために。糖尿病予備軍の人、必見!
「食べたら動く」が鉄則
食後は血糖値が上昇しやすく、高血糖による糖尿病を引き起こすリスクが高まります。病気を防ぐためには、必ず食後1時間以内に体を動かしましょう。朝・昼・晩と1日3回行うのが理想です。
血糖値を下げるのに有効な運動はウォーキングやジョギング、サイクリングなどといった「有酸素運動」です。糖分は運動時間が長いほど消費されやすくなる性質があります。そのため、自分のペースで続けやすい有酸素運動がうってつけなのです。運動が苦手な人は食後に20分程度のウォーキングを行うのがおすすめ。もし余裕があれば、減量効果が期待できる筋力トレーニングも併せて行うと良いでしょう。
自分にとって続けやすい運動量から始めることが大切
運動する習慣がない人にとって、いきなりきつい運動はハードルが高いものです。ダイエットで大切なのは、自分のペースで続けられるかどうか。軽めのウォーキングから始め、物足りないと思ったときに筋トレを増やして徐々に運動量を増やすべきです。あまり無理をせず、ゆっくり運動に慣れていきましょう。
血圧を下げるために。高血圧予備軍の人、必見
高血圧とはどんな状態?
血圧とは、心臓が血液を押し出す際に動脈側の内側にかかる圧力のこと。この圧力が上140mmHg、下90mmHgの場合に高血圧と診断されます。
血管は血流の圧力によって裂けないよう、柔軟に伸び縮みしているのです。しかし血圧が高くなることによって血管の内側が傷つきやすくなるだけでなく、血管の柔軟性が失われて動脈硬化を引き起こしてしまいます。
動脈硬化になると狭心症や心筋梗塞などの心臓病系疾患や、脳梗塞・脳出血などの脳系疾患といった難病にかかるリスクがあるため、血圧を上げ過ぎないようにすることが大切です。
有酸素運動で血圧が下がる
血圧を下げるためには、以下の4つが有効だといわれています。
- ●減塩
- ●肥満解消
- ●禁煙
- ●運動
4つの中でも最も有効なのが運動です。高血圧を改善するには、ほぼ毎日30分以上「ややきつい」程度の有酸素運動をすることが推奨されています。内容としてはジョギングやウォーキング、水中運動やサイクリングなどです。筋トレを併せる場合、ウェイトトレーニングのように強い負荷をかける種目は血圧が急激に上昇する恐れがあります。おすすめの筋トレは、自分の体重を利用した自重トレーニングです。道具を使わずに行えるので、ジムに行く必要がなく自宅で手軽に鍛えられます。
久しぶりに運動する際に気を付けたいこと!
運動不足でキレが悪くなる理由
基礎体力が落ちているので注意
久しぶりに運動をしたとき体が思うように動かない、すぐに息切れしてしまうといった経験はありませんか?
運動をしないと、20歳前後をピークに毎年1%ずつ筋肉量が低下。また運動量が減ると心肺機能も衰え、脂肪が燃焼されづらくなります。その結果体重が増加して体が重くなってしまうのです。
体力を戻すために有効なのはランニング
運動神経を取り戻してイメージ通りに体を動かしたいなら、筋力や心肺機能を強化することが大切です。おすすめの運動はランニング。まずは5km走りきることを目標に、無理のないペースで走りましょう。休まずに10kmほど走れるようになったら、体力が戻っているサインです。またランニングと併せて摂取カロリーをコントロールすると体脂肪率が落ちやすくなるため、肥満防止に大きな効果が期待できます。
超意外!いきなり前屈、アキレス腱伸ばしは危険
立った状態での前屈が最も危険
運動不足の人が立ったままいきなり前屈をすると、腰を痛めてしまう危険性があるため絶対にやらないようにしてください。
前屈して腰を痛めてしまうのは、太ももの裏側の筋肉であるハムストリングスや臀部周りの筋肉が硬くなっているからです。下半身の筋肉に柔軟性が足りないことから力が分散されず、腰椎に負担をかけてしまいます。
また準備運動の一環として、反動をつけてアキレス腱を伸ばそうとするのも危険です。筋肉が十分に温まっていないうちに伸ばそうとすると、筋を傷める原因に。準備運動の時点で筋肉を傷つけていては本末転倒です。
運動前は筋肉を温めることが大切。無理にストレッチをするのではなく、軽くジョギングをすると筋肉が温まりやすくなります。準備運動の際にぜひ試してみてください。
筋力低下は「しぐさ」にあらわれる
頬杖をつく人は首の筋肉が衰えている
頬杖をつくのが癖になっている人は、頭の重さを首の筋肉が支え切れていない可能性があります。頭蓋骨を支えているのは「頭板状筋」と呼ばれる筋肉で、加齢とともに減っていくのが特徴です。頭板状筋が減ると首や肩が疲れやすくなる、猫背になるなど姿勢のゆがみが発生しやすくなります。
日常動作で首の筋肉を鍛える
頬杖をついてしまう人は、一般的に運動不足であることがほとんどです。物を持ち上げたりガラスを拭いたりと大きな動作をすることによって頭が上向きになり、頭板状筋を鍛えることができます。家事や仕事などの合間に実践してみてください。
マッサージだけでは限界がある
姿勢が悪いと筋肉が疲れやすくなる
肩こりや腰の痛みなどは、姿勢の悪さが原因といわれています。
姿勢の悪さは、体重や骨を支える筋肉不足によって起こるものです。筋肉に強い負荷がかかることで筋肉がこわばり、筋肉がこわばることによってますます姿勢が悪くなってしまいます。
自分の体に関心を持つ
マッサージばかりに頼っていると、自身の筋力低下や姿勢の悪さに気付かないまま肩こりや腰の痛みに悩まされ続けることになります。痛みを根本的に解決するためには、自分がどのような姿勢で座っているのか関心を持つことが大切です。背筋をピンと伸ばして座ってみる、筋力を高めるために筋トレをするなどして、姿勢の改善や体を支える筋肉の強化を目指しましょう。
ポッコリお腹を凹ます!
いきなり腹筋より、身体の筋肉量をふやそう
ポッコリお腹は腹筋では治らない
出てきたお腹を何とかしたいと、腹筋を始める方は多いはず。しかし、実は腹筋運動はポッコリお腹の解消に不向きのトレーニングなのです。
特に男性の場合、お腹が出てくる原因のほとんどは内臓に脂肪がついたことによります。ついてしまった内臓脂肪を燃焼させるためには、有酸素運動が欠かせません。さらに有酸素運動で脂肪を効率よく燃焼させるには、腹筋だけでなく全身の筋肉量も増やす必要があります。
腹筋運動で筋肉量が増えないのはなぜか
腹筋をしても筋肉量が増えないのは、筋肉の構造が特殊だからだと考えられます。腹筋は腕や脚などの筋肉と異なり、お腹の周囲を覆う薄いい膜のような形です。そのため総重量が軽く、基礎代謝量を上げるには不十分だといえます。
一方脚や背筋、胸筋など「大筋群」と呼ばれる筋肉の場合は適切なトレーニングを行うことでkg単位の筋肉量を増やせるのが特徴です。筋肉が1kg増えれば、基礎代謝は50kcalアップするといわれています。お腹をへこませるためには、腹筋よりも大きな筋肉が集中する大筋群を狙って筋トレを行うのが効果的なのです。
運動が苦手でも筋肉量を増やす方法とは
お腹が出てくるのは、運動による消費カロリーよりも食事による摂取カロリーの方が上回っていることが原因です。運動不足や加齢によって筋力が低下すると、消費カロリーは減少。その一方、若いころと変わらない食事量を続けることで内臓脂肪が蓄積してしまうのです。
しかし、いきなり食事制限を行うのは体にとって負担が大きいもの。食事を意識することも大切ですが、普段の生活で運動量を増やすことが簡単で続けやすいでしょう。特に加齢とともに筋力が低下しやすい「下半身」を中心に鍛えるのがおすすめです。駅やオフィスの移動では階段を使う、信号待ちをせず歩道橋を渡るなど、積極的に階段を上ることで下半身の筋肉を刺激することができます。3ヶ月を目安に続けられれば下半身の筋肉が強くなり、脂肪が燃焼しやすくなるので試してみてください。
極端な食事制限はよくない
間違った食事制限は筋肉を減らす
普段食べ過ぎている人が意識して食事量を減らすと、脂肪を燃焼させる筋肉を衰えさせてしまうため要注意です。間違った食事制限は基礎代謝量を下げ、リバウンドの原因に。効果的に痩せるためには基礎代謝量をアップさせ、食べても太りにくい体を目指すことが大切です。太りにくい体は筋肉量の増加によって実現できます。日頃から食事量が多い方は、食事量を減らす前に筋トレを始めてみてください。
炭水化物の制限はリスクが多い
炭水化物を抜いてダイエットすると脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足し、体に害のある成分が発生する「ケトアシドーシス」という状態になる可能性が。炭水化物を制限する場合は、ケトアシドーシスをもたらすケトン体が増えすぎないように量を70g~130g程度にすると良いでしょう。
また、人は体の環境を一定に保とうとする恒常性が備わっています。食べる量を無理やり減らして体重を減少させても、体が元の状態に戻そうとしてリバウンドを発生させるのです。リバウンドを繰り返すと体に余計な負担がかかり、摂食障害や拒食症などを起こす原因に。
健康的に痩せるには食事制限ではなく、バランスの良い食生活と適度な運動が何よりも大切なのです。
汗をかいても脂肪は減らない
汗の量は脂肪燃焼量とは関係ない
大量に汗をかいても、脂肪が燃焼したことにはなりません。むしろ脱水症状を起こして内臓に大きな負担をかけてしまうため、非常に危険なのです。
体温の上昇は脂肪燃焼の妨げに
人間の体には脂質の分解にかかわる、「リパーゼ」という酵素が含まれています。リパーゼは体温が通常より1~2度ほど上昇した時に最も活性化するといわれており、体温が上がりすぎるとその働きが鈍くなってしまうのです。
高温の環境で汗をかくのは、脂肪燃焼を考えると非効率なこと。運動中は体温を一定に保てるよう、速乾性や通気性に優れたスポーツウェアを着ると良いでしょう。また、定期的な水分補給も重要です。たとえ軽度でも脱水症状を起こすと脂肪を燃焼するエネルギーが不足してしまいます。のどの渇きは脱水症状を起こしているサインなので、すぐに水分をとって脂肪燃焼に必要なエネルギーを失わないようにしましょう。
1ヶ月で凹むお腹と凹まないお腹がある
内臓脂肪はつきやすく減らしやすい
様々な病気を引き起こす原因となる内臓脂肪型肥満は、減らしやすい性質を持ちます。内臓脂肪型は全体的に肉がついている皮下脂肪型に比べ、お腹だけが出ている状態です。もともとの筋肉量が多いなら、1ヶ月程度の運動でポッコリお腹を改善できます。お腹をへこませるには、走っては歩く、走っては歩くを繰り返して、下半身の筋肉をつけることから始めましょう。1週間ほど続けたらランニングしてみてください。走るスピードをアップさせるのではなく、お腹をへこませることが目的なので無理のないように走りましょう。
皮下脂肪型はどのように痩せるのか?
お腹の脂肪がつまめる、ジャンプするとお腹が揺れるといった皮下脂肪型の場合、内臓脂肪型に比べて脂肪を落とすのが難しく時間がかかってしまいます。しかし最近の研究によると、皮下脂肪型の方は落としたい脂肪のある部分を局所的に狙って筋トレをすることで痩せやすくなるという報告が。有酸素運動をしながらお腹周りに負荷をかける筋トレを行うことで、引き締め効果が期待できます。
贅肉を落とすための運動のまとめ
贅肉を落とすためには、自分がどうして太っているのかをしっかり認識しましょう。いくら筋トレをしたり運動をして汗をかいたりしても、脂肪が燃焼されなければ意味がありません。また脂肪の蓄積は運動量の少なさに対して、食べ過ぎることで発生します。効果的にダイエットをするには運動不足を解消するだけでなく、カロリーの摂取量を適度に調節することが大切です。